バイオの業界ではいろいろな方法で広告などを行って、研究者に製品を買ってもらおうとしています。
当然、効果の高い広告と低い広告があるのですが、どれぐらいの費用対効果(ROI)になるのかは、よく考えてみると、僕がメーカーでマーケティングをやっているときも計算していませんでした。経験とか感覚(これは結構当たっていたとは思いますが)を頼りに、効率の良さそうなものとそうでないものを選んでいたと思います。また一口に費用対効果と言っても、どういうメッセージを伝えたいかによっても大きく変わるので、じゅっぱひとからげに費用対効果を数値化するのも誤解を招くことがあります。
そうは言うものの、一回自分の経験をもとに、非常におおざっぱですが費用対効果の計算結果を紹介したいと思います。
「これはちがう!!」ということもあると思いますので、そのときはぜひコメントを書いてくださいね。
ではいきます。
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費用 |
問い合わせ数 |
単価 |
雑誌広告 |
¥200,000 |
2 |
¥100,000 |
チラシ |
¥300,000 |
200 |
¥1,500 |
バナー広告 |
¥50,000 |
40 |
¥1,250 |
メルマガ |
¥150,000 |
¥100 |
1,500 |
学会展示 |
¥300,000 |
200 |
¥1,500 |
これはとても大雑把な数字ですが、一応この数字を出している根拠を書きます。
雑誌広告
雑誌広告というと、グローバルの本社がNature, Scienceには出すので、Nature日本語版および実験医学などということになります。広告の費用はエー・イー企画のウェブサイトを参考にすれば良いと思います。この価格に加え、広告原稿を作るためにも結構お金がかかりますので、費用はこんな感じになります。
さて効果のほどですが、すばり、雑誌広告を見たと言って問い合わせてきたお客様というのは、何年間かバイオの業界にいて、ほとんど聞いたことがありません。
もちろん広告を見てすぐに問い合わせなくても、何となく記憶に残っていて、徐々にブランドが構築される効果は否定しません。
でも自分自身が研究していたときも、広告が印象に残ったということはほとんどありませんし、極稀に印象に残ったものであっても、そのときにやっていた実験とは関係がなかったので何も買わなかったという経験しかありません。
したがって、問い合わせ数 2 という数字はテキトウに記入しましたが、雑誌広告があまり効果を持たないという意味ではこれはこれで良いのかなと思います。
チラシ
ここで言っているチラシというのは2-3万部刷って、自社の営業にも代理店にも余るほど配っておいて、「ほらばらまいてくれ」と言って配るものを指します。印刷費用もかかりますし、各地の代理店に郵送する費用も結構かかります。それで大雑把にこんな費用になるかと思います。
効果の程度ですが、これは結構あります。ただしチラシを代理店にしっかり配ってもらうためには、何かわかりやすいキャッチと、代理店が配らないでいられない理由が必要です。そしてこれはほとんどの場合、新製品もしくはキャンペーンの案内になります。逆にそうでなければ、ほとんど効果が期待できないというのもチラシの特徴です。また自社の営業担当者が代理店と良好な関係を築けていないと、チラシを配ってくれない、もしくは投げやりに配られてしまうという話もあります。
効果はだいたい100のオーダーになると思います。製品の汎用性やキャンペーンの魅力度などによって数倍はぶれると思いますが、数1,000になることは無いと思います。チラシに対する問い合わせはメーカーよりもむしろ代理店に入りやすいと思いますので、数を把握するのは難しいです。それでもチラシの場合はメーカーに直接入る問い合わせも少なくありません。
バナー広告
これはインターネット上のウェブサイトに貼るバナー広告です。
これもあまり効果がないです。ただ雑誌と違って、同じ効果がないでも、バナー広告の場合はクリックスルーが測定できますので、効果の無さがはっきりします。
そう思っているのは僕だけではないようです。羊土社やネイチャーのウェブサイトはいずれもバナー広告を募集していますが、どちらも開店休業状態に近いかと思います。ウェブサイトを見れば、メーカーのバナーが少ないことがよくわかると思います。
問い合わせ数(クリックスルー数)については、実際にあるウェブサイトにバナー広告を出して、そのクリックスルーをみた結果をもとに書いています。
ちなみにバイオの買物.comでもGoogleが提供している広告をたくさん貼っていますが、これもクリックスルーは低いですね。
メルマガ
メーカーでもメルマガをやっているところは多いですが、これはそれとは別に、第三者のメルマガに広告を載せてもらう話です。大きいところだと、ネイチャーのメールアドレスデータベースのうち、広告を流していいと了解をもらっているアドレスに対して、ネイチャーがメールを出してあげるというサービスがあります。
メルマガはタイトルがどれぐらい魅力的かが非常に重要で、やはり顧客は「サンプル」とか「キャンペーン」によく反応するようです。「セミナー」も効果的だと聞いています。
これも内容によってレスポンス数が大きく変わると思いますが、クリックスルーはやはり100のオーダーではないかなと思います。
学会展示
分子生物学会などの展示場にブースを出して、来てくれたお客様に製品の話をすることをここでは言っています。問い合わせ数というのは、製品のことをちゃんと話せたお客様数と考えると良いと思います。ただの冷やかしとか、景品をもらいたくてくる人も多いので。
ここは「サンプル」とか「キャンペーン」じゃなくても、ある程度ちゃんと製品について話ができます。来るお客様も自分からわざわざ足を運んでくれている人たちなので、メーカー側としては話していても結構楽しいことが多いです。
冷やかしのお客様を除いた数字として200はまぁまぁな数字かと思います。30万円という金額はブースひとこまのサイズなので、中堅以上のメーカーだとその2-3倍になることが多いと思います。
感想・結論
ひとことで言って、高いです。どの媒体も費用対効果は悪いです。インターネットを活用したものであっても、費用対効果は高いと言えないと思います。
いまは媒体側もあまり真剣な活動をしていなくて、費用対効果が高い広告媒体を作ろうという努力が足りないと思います。でもこの状況なので、良い媒体ができればかなりのビジネスがとれると思います。
ちなみに僕はいまGoogleのAdwords (検索連動型広告)を使って、「まとめて抗体検索」に誘導する広告をうっていますが、これの費用対効果 (クリックスルーの単価)はかなりすごいです。あまりにも低くて(つまりクリックスルーが安く入手できる)、ちょっとここでは言えないぐらいです。
ですから、バイオ業界だから費用対効果が悪いというのではなく、どこかやり方が悪いということだと思います。