Androidがローエンドマシンに向かない話の振り返り

今日、久々に第4世代iPod Touchを触りながら、9ヶ月前に書いた「Androidがあまりにも高いスペックが必要で、ローエンドマシンに向かないという話
を振り返って見ました。

第4世代iPod TouchはCPUが800MHzシングルコアのA4で、RAMは256MB、ディスプレイは3.5インチのretinaです。2010年9月発売ですが、これでiOS 6を動かすと結構快適なのです。

ドコモ P-01D CPU Snapdragon シングルコア1GHz、512MB RAM、Android2.3と同程度の快適さでした。ただしAndroidは使っているうちにどんどん遅くなってしまうので、テスト前にハードリセットをした場合との比較です。

何よりも、retinaディスプレイがRAM 256MBで快適に動いているのが凄いと思います。

第4世代iPod TouchはiPhone4と同世代でRAMが半分だという以外は同じですが、そのiPhone4で最新のiOS7が快適に動くとも言われています。

ハードが低スペックでもソフトウェア次第でまだまだ使えると改めて感じました。

ところで9ヶ月前に書いたブログではTizenもしくはFirefox OSが途上国で売れるようになることを想像していました。時期としては2014年を想定していました。しかしどうやらすでに2013年の間に、Windows Phone 8のNokia Lumia 520がそのシナリオに従って成功し始めているようです。

そのLumia 520はスペックがiPhone 4レベルでAndroid 4.0に必要なRAMすらありません(512 MBのみ)。Firefox OSが狙っているのと同程度のローエンドです。

予想したよりも時期が早かったので役者の予想も外しましたが、Androidがローエンドから食われるという予想自体は当たっていたかもしれません。

特定用途のパーソナルコンピュータ

このブログでも取り上げていますが、先日NPDが“U.S. commercial channels”の売り上げデータを発表しました。ネット上で話題になったのは、このデータで見る限りChromebookがよく売れているというデータでした。それに対して、私は「Chromebookが売れているという記事があるので、それを検証する」というポストの中でNPDのデータの問題点を取り上げ、以下のようにまとめました;

“U.S. commercial channels”でChromebookが売れるようになったといっても、全体としてChromebookが売れているわけではなさそうだし、どうして“U.S. commercial channels”だけが強いのかがまだわかりません。

Twitterで業界アナリストのBen Bajarin氏に尋ねてみると、以下のように教えてくれました。

スクリーンショット 2013 12 30 12 13 50

さらに有料購読しないと読めないのですが、Ben Bajarin氏は“Understanding the Market for Chromebooks”という記事も書いてくれ、解説してくれました。この記事のポイントをまとめます。

  1. Chromebookの大半は教育市場に向けて販売されています。
  2. 教育市場ではそれなりに多くのChromebookが導入されています。
  3. U.S.の教育市場ではウェブベースのプログラムが多く使用されています。
  4. 使い方としてはChromebookはオンライン教育ソフトウェア専用ポータルになっています。
  5. 「教科書」と同じような使い方になっています。
  6. Chromebookは“specific purpose device”(特定用途デバイス)として使われています。

Ben Bajarin氏のこの情報を考慮すると、NPDデータの謎が解けます。

  1. “U.S. commercial channels”というのはおそらくは日本でいう大塚商会などのように、ハードウェアとソフトウェアとセットアップと管理などをすべてまとめて納入するValue Added Reseller(付加価値再販業者)を指します。教育市場に製品を納入する業者もおそらくこれが多いのでしょう。またNPDはAmazonやDELL直販、Apple直販などのデータは収集していません。したがって今回のNPDのデータがパソコン市場全体を反映しないのは当然のことです。
  2. Chrome OSがウェブ使用統計に出てこないという謎は私もブログで取り上げています。2013年11月現在のデータを見ても、Chrome OSの使用は極めて少ないものにとどまっています。そこで「いったいChromebookは何に使われているんだ?」という疑問が湧きます。Ben Bajarin氏の情報から考えると、Chromebookは学校専用ですので、学校で使うサイト以外を閲覧するのには使われていないと考えられます。ウェブ使用統計を集計しているStatCounterは、学校で使うサイトの統計は収集できていないのかもしれません。もしそうであれば、Chrome OSがウェブ使用統計で極めて少ない謎が解けます。
  3. まだ解けていない謎は残っています。AmazonのランキングでChromebookが上位に出ている点です。教育市場に大量に納入されるChromebookがAmazonから購入されているとは考えにくいです。またAmazon購入者は一般的な用途にChromebookを使うでしょうから、もっとウェブ使用統計に反映されると期待されますが、実際にはそうなっていません。この謎はまだ解けていませんが、予想としてはAmazonのランキングが市場全体を反映していないのだろうと思います。

特定用途のパーソナルコンピュータ

Ben Bajarin氏の情報の中で凄く面白いと思ったのは「特定用途のパーソナルコンピュータ」です。

家で使用するパソコン、あるいは仕事で使うパソコンを想像するとき、パソコンというのは多用途のデバイスです。メールを書いたり、インターネットをしたり、エクセルファイルで集計をしたり、ワードで文章を書いたり、パワーポイントでプレゼンテーションを書いたり、ゲームをしたりと、パソコンは非常に多様とのデバイスです。

しかし近所の薬局やレストランに行くと、タイムカード専用や売り上げ集計専用のパソコンがレジの横に置いてあったりします。このパソコンはもちろんゲームに使われませんし、プレゼンを書くのにも使用されません。インターネットに接続するにしても、イントラネットや仕事で使うSaaSに接続するだけでしょう。単一用途ではないにせよ、極めて限定的な用途で使われているパソコンです。ただしこれらのパソコンは今までは店舗に1, 2台あるだけで、数はそれほど多くありませんでした。

米国の教育現場では、生徒全員に1台のパソコンを支給するという流れがあります。これは非常に高価なプロジェクトですので、近年パソコンの値段が下がったことで初めて現実的になったものです。これも限定的な用途で使われるパソコンです。

近年Androidのタブレットの躍進が著しいのですが、大半のAndroidタブレットはビデオ専用に使われているという話があります。これもまた限定的な用途で使われているパソコンと言えます。

我が家にはiPadが2台あります。ほぼ子供専用です。ウェブサイトを見たり、メールを書いたりするのにはほとんど使用しません。これも特定用途のパソコンです。

どうやら「特定用途のパーソナルコンピュータ」が急速に増えている感じです。理由は価格が下がったこと、それから場所を取らないからでしょう。そしてパソコンの売り上げ統計だとかマーケットシェア分析の時には「特定用途」のものと「多用途」のものがすべてまとめて集計されてしまいますので、訳がわからなくなります。業界のトレンドが正確に読めなくなってるのです。

日本の通信関連で占うのなら、ガラケーがどうなるかでしょ

年末なので2014年はどうなるのかを予想してみるのが一つのお決まりです。そして日本の携帯電話を含めた通信分野に関していえば、占うべき課題はガラケーの将来、そして日本の携帯電話メーカーの将来がまず第一ではないでしょうか。

  1. 9月26日にパナソニックが個人向けスマートフォン開発からの撤退を発表
  2. 7月31日にNEC (NEC・カシオ・日立) がスマートフォンの開発と生産から撤退を発表
  3. 残るはシャープ、ソニー、富士通、京セラ (情報通信総合研究所)
  4. ドコモがiPhoneの取り扱いを開始した

これだけのことがあれば、残された日本の携帯メーカーは2014年を乗り切れないのではないかと心配してしまいます。

その一方でガラケーを使い続ける人にも今年はスポットライトが当たりました。ガラケーには根強い人気があるということです。NHKでは「ガラケーの逆襲」という番組もやりました。

そう考えると2014年のシナリオとして以下のことが考えられます。

  1. 日本の携帯電話のうち、スマートフォンから撤退する会社が後2つぐらいは出るかも知れません。
  2. ただしスマートフォンから撤退しても、パナソニックのようにガラケーを売り続けるかもしれません。
  3. スマートフォンの市場は飽和し、スマートフォンとガラケー共存の時代になるかも知れません。

これはこれで構わないのですが、世の中の進歩という意味ではいささかつまらないシナリオです。そこで「占う」というよりも「現実的な希望」という意味で、2014年にこうあって欲しいというシナリオを描きたいと思います。

スマートフォン or ガラケー ではない

ガラケーを愛用し続ける人が挙げる理由は大まかに次の2つです;

  1. ガラケーの方が月額料金が安い
  2. ガラケーの方が電池が持つ
  3. ガラケーの操作性に慣れている

このそれぞれのポイントは現在スマートフォンにはなくてガラケーにだけある特徴です。もしこれらがスマートフォンでも実現されれば、ガラケーを使い続ける理由がなくなります。

そこでこれを検証したいと思います。

どうしてガラケーの方が安いのか

ガラケーを作るためのコストは実のところ、結構高いのです。信頼性のある情報をウェブで見つけるのはなかなか大変なのですが、ケータイの開発現場にいたという人のこのブログに情報がありました。

私はケータイの開発現場にいたので、2万円未満のケータイの実現性は何となくわかります。ケータイのハイエンド機種と中位機種の中身に大差ありません。核となるチップやファームウェアは同じものを使用し、音源チップやLCDの変更などでコストを削っています。このやり方でさらに半額以下にするのは至難です。端末の価格はメーカーの原価だけでは決まりません。販売店やキャリア、運送業者なども利益を出す必要があります。

2万円未満で新機種を販売するには、最初からそれが可能な開発手法が必要です。仕様の割り切り、設計の外注、製造の外注、直販、エアダウンロードのあり方、販売期間の設定、等々。

一方でスマートフォンは開発競争が激しいせいか、それとも部品が少なくて製造しやすいせいか、世界ではかなり安価なものがSIMロックフリーで販売されています。性能的も特にWindows PhoneのLumia 520などは好評です。Lumia 520はSIMロックフリーで2万円以下で売られ、今では1万円ぐらいまで値下がりしています。

こう考えると少なくとも2014年時点において、スマートフォンの端末価格はガラケーの端末価格を下回ります(ずっと前からそうだったという話もありますが)。

そうであるならば、スマートフォンの通信量をソフトウェア的に抑制し、ガラケーと同じような通話・メール中心の安価な料金プランを用意することは可能なはずです。ウェブを見たりFacebookを見たりする時にはWiFiを使ってもらえば良いのです。

細かい技術ハードルはいくつもあるでしょうが、ハード的にも通信環境的にも非常に整備されている現状では大した問題ではないだろうと想像されます。

実はGoSmart MobileというT-Mobileのサービスの一つが、無料のFacebook接続プランというのを1月から提供する予定です。通話料のみのプラン(25 USD)を利用している顧客でも、Facebookだけは追加料金無しでアクセスできるサービスです。

Facebookをキャリアメール、もしくはLINEに置き換えると日本人にはわかりやすいと思います。通話料のみのプランだが、キャリアメールとLINEだけは使い放題。他のインターネットサービスは有料。

是非こうなって欲しいと思います。

スマートフォンの電池をもっと持たせる方法はないか?

スマートフォンの電池を長持ちさせるのは技術的には簡単ではなさそうです。iPhoneも処理能力は飛躍的に進化していますが、電池の持ちはそれと比べて余り進化していません。

ただ手段が尽くされたという状況でもなさそうです。例えばiPhoneとAndroid端末を比較すると、iPhoneは半分ぐらいしか電池容量がないのに動作時間では大きく負けないという結果もあります。2014年にはまだ大きな期待はできませんが、徐々に電池の持ちは改善していくかも知れません。

操作性の問題

操作性については慣れの問題があります。そしてガラケーの操作がしやすかったかと言えば決してそうでもなかったという気もします(先日、父のドコモのらくらくホンの使い方がわからなくて苦労しました)。何とも言えないところがあります。

「らくらくスマートフォン」で強く感じるのですが、「楽にする」ということと「覚えたいと思わせる」ことはセットで考えないといけません。「楽にする」を強調する余り、魅力的な機能を削ってしまうと「覚えたいと思わせる」ことができません。

そして顧客にアンケートをとると決まって「楽にする」系の解答が多くなる一方で、「覚えたいと思わせる」系の解答は少なくなります。「覚えたいと思わせる」機能はまだ実現されていないことなので、顧客はまだニーズを感じていませんから。

このあたりはApple以外はほとんど実績がないところなので、なかなか進歩がないかも知れません。

まとめ

こうあって欲しいことの中で、一番実現可能なのは最初の通話料の問題だと思います。もちろんキャリアとしてみれば「稼げるだけ稼ごう」というのがあるので、余り積極的にはやってくれないかも知れません。

一方でガラケーで何とかしのぐというのも凄く不自然な状態です。利益的にも不利なはずです。2014年に何か新しい方向性が生まれたら良いなと思っています。

Moto Gがどれぐらい売れているかを推測してみる

昨日のポスト「Windows Phoneについて思うこと」の中で、Windows Phoneが成功するための1つの戦略、low-end disruption戦略について解説しました。そしてlow-end disruptionが成功するかどうかはまず最初にはMoto Gが売れないこと、さらにその次にSamsungが有力な対抗馬(同価格帯で同等以上の性能)を出せないことにかかっていると述べました。

まずはMoto Gについてですが、GoogleはNexusやMotorolaの販売台数に一切公開してきていませんので、今後も公式なコメントが出るとは期待しにくいです。あくまでも推測として現状を考えてみます。

状況証拠としては以下のことがあります;

  1. Moto Gは途上国やヨーロッパを狙って開発されました。そして当初はブラジル、メキシコ、チリ、アルゼンチン、イギリス、ドイツ、フランスとカナダで発売し(2013年11月中旬)、段階的に米国を含めた30ヶ国に広げていくというローンチ戦略が予定されていました。
  2. しかし2013年11月26日に速くもその計画が変更されました。すぐに米国で発売が発表され、開始されました。
  3. Moto Gの在庫切れの情報はウェブには報告されておらず、流通チャンネルには十分な在庫があるようです。

シナリオとしては以下の可能性が考えられます;

ポジティブシナリオ

  1. 11月中旬の発表で思った以上に米国の反響が良かったので、米国での販売を前倒しした可能性。
  2. あるいは米国限定で発売している兄貴分のMoto Xがあまりにも散々な売り上げなので、急遽Moto Gの米国での販売を先送りした可能性。
  3. いずれにしてもMoto Gの在庫は潤沢に用意していたので、急激な変更に対抗できた可能性。

ネガティブシナリオ

  1. 途上国を中心に販売を準備したものの、顧客または流通チャンネルの反応が鈍く、急遽在庫が過剰になってしまった可能性。
  2. 実際に発売しても思ったほどは売れなくて、在庫が過剰になっている可能性。

推測

どっちにシナリオが正しいかはわかりません。しかし間違いがないのは在庫が十分にあることです。それも流通チャンネルの在庫ではなく(こっちの在庫は簡単に米国に回せない)、モトローラの倉庫の在庫です。

スマートフォンの世界で人気の機種が、発売当初からこのように在庫が潤沢というのは珍しいように思います。

Androidのウィジェットの役割について考えてみる

ずっと知らなかったのですが、HTCがHTC Senseをデザインする際に行った調査の概要がHTC Blogに掲載されています。

  • Most people don’t differentiate between apps and widgets.
  • Widgets aren’t widely used – weather, clock and music are the most used and after that, fewer than 10% of customers use any other widgets.
  • Most of you don’t modify your home screens much. In fact, after the first month of use, approximately 80% of you don’t change your home screens any more.

要するにAndroidユーザのほとんどはWidgetを使わないそうです。使うとしても天気と時計と音楽で使うだけだそうです。

さて、それで手元のGoogle Nexus 7 (Android 4.4.2 KitKat)を初期化してホーム画面を確認すると、以下のようになっていました。

Screenshot 2013 12 24 09 49 45

ホーム画面は5枚あるのですが、上記の画面の右隣だけが何か入っていて、入っていたのは以下の写真です。

Screenshot 2013 12 24 09 49 54

どれもGoogle Play (アプリや書籍、音楽、ビデオを購入するためのGoogleのサービス)のWidgetです。

AndroidのWidgetはだれのため?

顧客サイドからいえばWidgetはほとんど必要ありません。でもAndroidのホーム画面はWidgetを表示するのが役割です。それでどうするか?

  1. HTCはBlinkFeedをトップ画面にして、Widgetの設定をしていなくても強制的にニュースやSNSアップデートの情報をトップ画面に表示しています。顧客サイドでは必要を感じていないものをトップに持ってきているので、Widgetの押し売りと言っても良いでしょう。
  2. Googleが押し売りしているのはGoogle Playに関するWidgetです。何だろうと思ってクリックするとGoogle Playに誘導されて、ビデオや書籍を薦められます。
  3. 手持ちのAU Galaxy SII WiMAX (Android 4.0.4)の場合は時間と天気のWidgetがトップページに表示されます。それ以外にはAUサービスのWidgetやSamsung関連のWidgetが並びます。

こうしてみるとAndroidのWidgetは結果的にユーザのための機能ではなく、メーカー(OEM)、そしてキャリアのための機能であったことが悲しいほどに鮮明に見えます。Google自身でさえ、ユーザのためにトップ画面を使っているのではなく、Google Playのプロモーションに使っているわけですから。

iPhoneとAndroidに関する気になる記事

iPhoneとAndroidに関する興味深い記事が最近多いので、メモとして残しておきます。

日本でiPhoneが大人気という話

アップルが国内の10月のスマホ販売の76%獲得-カンター調査

10月に日本で販売されたスマートフォン(多機能携帯電話)のうち、米アップル社の「iPhone」(アイフォーン)が76%を占めた。

NTTドコモが販売したスマホのうち、アイフォーンは61%に上る。

情報元のKantarのTwitter上のTweetを誤訳したものがlivedoorで公開され、ネット上に話題になっていますが、あっちは誤りでこっちの情報が正しいです。

2013年の1月22日にはNTTドコモの加藤薫社長が

「スマホの総販売台数に占めるiPhoneの割合が2~3割なら取り扱いもありえる」

語っていました

2-3割のはずが、ふたを開けてみたら61%だったということです。

気になるのはNTTドコモのAndroidがどのような影響を受け、ドコモ全体のスマートフォン販売台数がどのように推移したかです。今までだったらばAndroidを買う顧客がiPhoneを買っただけで、スマートフォン販売台数としてはそれほど上がらなかったのか。それともこの61%はほとんどが上積みで、ドコモのスマートフォン販売台数が驚異的に伸びたのか。実際にはその中間のどこかに答えがあるのでしょうが、私はかなり上積みになったのではないかと予想しています。

オンライン広告はiOSの方がずっとよく見られているよという話

Apple widens lead over Android in worldwide ad impression share, now twice as large

こういう調査の絶対値はあまり信用できませんので、気にしていません。大切なのは iOSが3%上昇したのに対して、Androidが6%低下したことです。

NewImage

NewImage

Black Fridayのオンラインショッピングでは、モバイルのうち82%がiOS

NewImage

これは単にページビューが多かったかどうかという話ではなく、実際にどれぐらいの売り上げが得られたかというデータです。しかもiOSユーザの方が顧客単価が高いそうです。

数字を見ていくと;
iOS全体: 17.3%
Android全体: 3.75%
Tablet全体: 13.2%
Smartphone全体: 7.8%
と紹介されいます。

iPhoneを 7.8% – 3.75% = 4.05% として計算すると、Android全体とiPhoneというのは競った数字になっています。したがっておそらくは、iOSとAndroidの差はほとんどがiPadによるものであり、Androidのタブレットがほとんど使われていないためにこのような顕著な差が生まれたのだろうと思います。

とにかくAndroidのタブレットはオンラインショッピングには使われていない。それに尽きます。

マーケティング戦略無き製品 Google/MotorolaのMoto Gを見て

Google傘下のMotorolaがMoto Gという低価格のスマートフォンを発表しました。

特徴は廉価で高機能となっており、“並外れた電話を並外れた価格で”と謳っています。

新興国をメインにターゲットしているということで

今週中にブラジルと一部欧州で発売し、数週間以内に中南米、欧州諸国、カナダ、そして一部アジアに拡大する。2014年1月前半にその他のアジア諸国、米国、インド、中東に投入する。

となっています。

さて問題は、これがうまくいくかどうかです。

とりあえずブランディング、販売チャンネル、競合を見ていきましょう。

価格

価格は179 USDとなるようです。問題はこれが高いのか安いのか。

Janaという会社が行った調査によると、まぁ何とも言えない感じです。性能的にはずいぶんと落ちますが、例えばSamsungのGalaxy Yはインドでは6000ルピー、99 USDぐらいです。

ブランディング、販売チャンネル

先ほど紹介したJanaの調査結果を見ると、「既に持っている機種」 “What brand of mobile phone do you have?”で見ても、「買えたらいいな」 “If you could buy any mobile phone in the world, what phone would you buy?”のどれで見てもMotorolaは全然イケてません。

特に「既に持っている機種」での不人気ぶりを見ると、Motorolaは有効な販売網を持っていないのではないかと思われます。GoogleはMotorolaを買収した後、昨年以降Motorola社の携帯電話をインドで売るのをやめたそうです。ただし「既に持っている機種」の結果を見る限り、販売を中止した時点でも販売網はたいしたことが無かったようです。

加えてブランディングだけ考えるも、「買えたらいいな」の結果を見る限りMotorolaブランドはほとんど価値を持っていないようです。思い切ってGoogleブランドで行かないと効果が無いんじゃないかと思えます。

競合

Moto Gの特徴は、「廉価で高機能」です。しかしその高性能は何によってもたらされているのでしょうか?スペック表を見ると1) 高解像度のスクリーン (720×1280) 2) 高速CPU (1.2GHz quad core) 3) 1GB RAM 4) 大型電池 (2070mAh) などです。Galaxy Yのスペックは 1) スクリーン 240×320 2) 830MHz CPU 3) 290MB RAM 4) バッテリー 1200mAhです。したがって高性能は主にハードウェアによってもたらされているが明らかです。

スクリーンはおそらくSamsungもしくはLG製、CPUはQualcomm製、RAMはアジアのどこかから調達でしょうから、これらのコンポーネントはMotorola内製のものではありません。

こう考えると、Moto Gと同じスペックのものを例えばSamsungが作ろうと思えば、いとも簡単に作れるだろうと想像できます。それももっと安く。

Moto Gの特徴である「廉価で高機能」が持続可能な差別化ポイントとはとても思えません。Googleが赤字覚悟で値段を設定していない限り。

総合的に考えると

マーケティングで重要なのはブランド力、製品力、価格競争力、販売力(販売網の協力)、そしてプロモーション力になります。Moto Gの場合、新興国ではブランド力、販売力がありません。Samsung Galaxy Yと比較すると価格競争力もありません。巨額の広告宣伝費をかければ効果的なプロモーションは可能かもしれませんが、Googleが相当にお金を出してあげないと無理でしょう。

唯一あるのは製品力ですが、それもあくまでも同価格帯の製品との比較であって、例えばGalaxy S4などには劣ります。中途半端であるのは間違いありません。

今後の予想

GoogleのNexusシリーズはNexus 7を除けばごくわずかしか売れていません。Motorolaが大々的に発表したMoto Xも販売不振です。Google/Motorolaにはハードウェアをちゃんと売るという実績が近年は全くありません。

評論家の間では性能と価格面で高評価だったものがなぜ売れなかったか。普通に考えると販売網が全然機能しなかったのだろうと推測されます。

Moto Gでそれが変わる気配は全くありません。おそらく最初からほとんど売れないでしょう。

仮に売れ出したとしても、Samsungは簡単に対抗策を打ち出せます。同じ性能でより安価なものが作れるでしょう。あるいは販売チャンネルの強みを活かして、Motorolaを閉め出すことも可能でしょう。

それにしても「廉価で高機能」という戦略はGoogleが一貫してNexusシリーズでチャレンジし、ずっと失敗し続けている戦略です。なかなか失敗から学びません。

他の評論

このポストを作成している間に、インドの事情に詳しいNitin Puri氏がZDNetに記事を投稿していました。

以下に引用します。

Unfortunately, Google Motorola has a tough battle ahead in India, as along with the bulkier weight of the Moto G, the pricing is not as aggressive as what other leading manufacturers are currently offering in India for the low end market. For example, Samsung’s Galaxy Young, with a 3 inch screen and weighing just 3.4 ounces, sells for only US$100 on Amazon. Furthermore, Chinese handset makers such as Huawei and ZTE already sell Android devices as low as US$100 too.

もちろんiPhoneがインドで実質0円で発売されているという点も考慮しないといけません。

携帯電話の価格って何だろう。インドでiPhoneが2年契約で安くなる報道を受けて…

日本ではiPhoneなどは実質0円で買うことが可能です。実質0円というのは、2年間の通信料をキャリアが割引して、それで割引額の合計がiPhoneの本体価格と同じになるという仕組みです。つまり2年間キャリアと契約することを約束すれば、キャリアがiPhoneの代金を割引してくれるという仕組みです。

表題のインドの件は、いままではインドではこのような割引がなく、本体価格を丸ごと末端消費者が払わなかったのに対し、最近RComというキャリアがiPhone本体価格を割引してくれるようになったという話です。例えばインドでの iPhone 5S 16G本体価格は 53,500ルピー(約84,000円)であるのに対して、RComと2年契約(毎月2,800ルピー、約4,400円)を約束すれば実質 0ルピーになります。

「インドのような発展途上国でiPhoneを売っていくためには低価格のiPhoneモデルが必要だ」と多くのアナリストは述べていましたが、またしてもAppleは“Think Different”をしたことになります。

このようなアナリストが期待したほどにiPhone 5Cが安価ではなかったことからもわかるように、Appleの発展途上国での戦略は低価格モデルの導入ではなく、先進国で成功しているキャリア補填モデルであることは明白です。

まずRComとはどのようなキャリアか?

RComがインドでiPhoneを実質0円から提供するというのはいったいどれだけの意義があるのか。それを知るためにはRComがどのような会社かを知る必要があります。

Wikipediaによると、RComはインドで第二のキャリアで1.5億人のユーザがいます。そしてインドで4Gを提供する準備をしている2社のうちの1つだそうです。したがってインドでは相当に大きなキャリアであることがわかります。

RComがiPhoneを実質0円にするというのは相当にインパクトがありそうです。

加えて現在RComのウェブサイトに行くと、次の画面に転送されます。このことからRComがかなり本気だというのがわかります。

Reliance Communication

最初の画面の後のトップページもiPhoneばかりが目立ちます。

Reliance Communications Online Recharge Reliance Mobile India s premier GSM CDMA service provider

間違いなくRComは本気です。

iPhoneは誰が買うのか?

代理店、卸や問屋を相手にマーケティングやセールスを経験したことがある人なら常識ですが、メーカーは末端ユーザに製品を売る前に、まず中間業者や小売店に製品を売り込む必要があります。中間業者は必ずしも末端ユーザの利益を最優先していません。その上、中間業者が「売りたくない」「売り場に置いてやらないよ」と言ったら製品は売れません。

これは例えば安値を武器に市場に参入しようとするときに障害になります。既に販売されている高額な製品と競合するものとして安価な製品を新規に導入しようとして、中間業者はなかなかOKしません。末端顧客にメリットがあってもです。なぜならば高額な製品を売った方が中間業者は儲かるからです。営業の人はよほどのことがない限り、わざわざ高額な製品を購入し続けているユーザに安価な製品を紹介しに行きません。自分から売り上げを落としているようなものです。

Googleが安価に販売しているスマートフォンのNexusシリーズがことごとく売れていない理由はここにあります。キャリアとしては、高額なGalaxy Sシリーズを買ってくれる顧客にわざわざ安価なGoogle Nexusを紹介することはしないのです。

それではキャリアに「売りたい」と思わせるスマートフォンとはどんなものでしょうか?それはずばり、高額なデータプランを継続して購入してくれるような上客を(他のキャリアから)引き寄せてくれるスマートフォンです。そしてロイヤルティーが高く、長期継続してくれる顧客を呼び寄せるスマートフォンです。

それをやってくれるのがiPhoneです。そして今のところiPhoneだけです。

iPhoneはキャリアにとってのマーケティングツールです。広告です。客寄せパンダです。優良な顧客が手に入るのであれば、実質0円となるように補填することは十分にペイします。だからキャリアはiPhoneを買い、優良顧客に「あげる」のです。

キャリアはiPhoneを売っているのではありません。iPhoneを買っているのです。

キャリアがそこまでして顧客を欲しがる理由は?

通信キャリアはほぼ固定費のビジネスです。無線ネットワークを一端構築すれば、パンクしない限り、利用者が増えても増設はしません。利用者が増えてもインフラは同じで済みます。

ですから利用者が増えれば増えるほどキャリアは単純に儲かります。

逆にせっかくインフラを構築しても利用者が少なければあっという間に赤字です。それが固定費ビジネスの怖さです。

4Gネットワークが普及してくると、まずキャリアはインフラ構築のために大きな支出(固定費)を強いられます。その一方で回線に余裕が生まれます。その余裕分をなるべく優良顧客で埋めておきたい。余裕が少なくなるように顧客を増やしたい。それがキャリアの本音になります。

そこでRComは世界で一番優秀なセールスマン、つまりiPhoneを採用したのです。

今後は

Androidの急成長ぶりが注目されている一方で、日本と米国では逆にAndroidのシェアが下がり、iPhoneのシェアが上がっています

日本にいるとその理由はよくわかります。iPhoneの方が品質が高く、そして本体価格そのものはAndroidよりも高価なのですが、キャリアからの補填で実質ではAndroidよりも安価だからです。

注目されるのは A) 世界でのAndroidの成長が継続し、iPhoneのシェアが下がっていくのか? それとも B) 日米を追いかけるように、他の国でも徐々にAndroidのシェアが下がり、iPhoneのシェアが上がる局面を迎えるか、です。どっちのシナリオが主になるかです。

そして上記の議論にしたがうと、Aが主になるのかBが主になるのかは直接的には携帯電話本体の価格や顧客の経済力によって決まるのではありません。むしろキャリアのビジネスの構造、例えば利益や次世代通信インフラへの投資によって決まります。例えば途上国のキャリアが積極的にデータ通信インフラに投資すれば、固定費が多くなり、それを埋めるための良質の固定客を積極的に集める必要があります。これはB)に傾くシナリオです。

A)のシナリオが主であり続けるならば、いずれAppleはiPhoneの価格を下げて、新興国での売り上げ拡大に走るでしょう。一方 B)のシナリオが多くなってくれば、AppleはiPhoneの価格を下げることなくシェアを拡大することができ、今まで以上に強い地位を築くことができるようになります。

Androidが登場して以来、A)のシナリオが特に途上国では主でした。しかしインドのキャリア補填が成功し、なおかつChina Mobileが中国でもiPhoneのキャリア補填を実施すれば、世界は急速にBのシナリオに傾くかも知れません。

その流れに注目していきたいと思います。

タブレットという製品のわかりにくさ

製品を理解し、マーケティング戦略や販売予測などをするときは当然ながら a) この製品はどの市場にいるか b) 競合製品は何か を考えます。そしてこれが意外と簡単ではなく、間違った分類をしてしまって大きく戦略を間違えることもあります。

タブレットについても同じことが当てはまります。

タブレットが競合しうる製品はいくらでも思いつきます。

  1. パソコン
  2. ゲーム機
  3. DVDプレイヤー や テレビ
  4. カーナビゲーションシステム
  5. 書籍
  6. 紙(印刷機)
  7. 楽器
  8. などなど…

なのに話題はタブレットがパソコンに取って代わるのではないかに集中しています。

確かにパソコンの販売台数は落ち込んでいます。しかしゲーム機市場はもっと落ち込んでいますテレビの市場も落ち込んでいます

タブレットの用途を見ると、パソコンとしての用途よりもゲーム機やテレビ、書籍として使っている時間の方が長いかも知れません。そうであるならば、タブレットとそういう製品を比較しないと意味がありません。

タブレットのウェブ使用率が低いという不思議

最近タブレットの売り上げ台数がPCを越え、いよいよタブレットがPCに取って代わるのではないか、これがPost PC時代の到来だという意見を最近よく耳にします。

それに対して私はこのブログの中で、「状況はどうもそんなに簡単ではない。タブレット市場で起こっていることは何かちょっと変だ。」ということを繰り返し述べています(1, 2, 3)。

今回はタブレットのウェブ使用率が低くて、とてもPCに取って代わっている様子がないことを紹介します。

以下にStatCounterから取ったデータを紹介します。なおこのグラフでiOSと言っているのはiPadのことです。またAndroidもタブレットの集計となっていますが、最近やっと1.5%に届いている状態のため、グラフには表示されていません。またデータはUSAのデータです。USAはタブレットの普及が進んでいると言われているので採用しました。

StatCounter-os-US-monthly-201110-201310

ポイントは以下の通りです;

  1. iOS (iPad)のウェブ使用率は徐々に伸びています(2年前は1.96%で現在が5.75%)。しかしPCのウェブ使用率にはまだ遠く及びません。
  2. 「iOSはまだ出たばかりだから」という議論は可能です。しかしWin8のグラフを見ると、2012年10月ごろに登場して、現在までに7.71%となり、iOSをあっさり抜いています。「でたばかり」というだけでは十分な説明になりません。
  3. 参考までにAndroidは現時点で1.49%です。2年前の0.19%よりは大きく拡大していますが、Androidタブレットの販売台数の急増を考慮すると寂しい数字です(Linuxですら1.44%)。

この状況をどう解釈するべきか?

まだ「でたばかり」と考えても、タブレットのウェブ使用率がPCよりも大きく劣るのは間違いありません。タブレットではアプリを多く使っているかも知れませんし、ビデオをたくさん見ているのかも知れません。ゲームをたくさんやっているのかも知れません。

しかしPCの一番の用途である「ウェブ閲覧」において、タブレットが代替する気配すら見せていないのが現状です。

このデータを見る限り、「タブレットがいずれPCを代替する」と結論するのはまだ時期尚早な感じがします。