Grouponの割引を見て、バイオ業界のキャンペーンを考える

Grouponという会社やそのビジネスモデルが最近非常に話題になっているらしく(ただそういう僕もつい最近知ったのですが)、確かに面白いと思うのですが、その割引率が結構すごいんです。

Grouponについてはこのブログがたくさん書いていて、リンクした記事以外にも多くの記事があります。

それで実際にGrouponのウェブサイト(シカゴ)に行ってみると、何に驚くかというと割引率のすごさに驚きます。50%引きはまさに当たり前で、それより少ない割引率はほとんどありません。Grouponの日本法人のサイトを見てもやはり割引率はすごくて割引率は50-90%の間。多いのは50%強の割引のようです。

groupon.pngバイオの業界でも結構大きな割引が横行しているのですが、さすがにここまではなかなか割り引きません。少なくとも公に行う割引キャンペーンは50%までです。

Grouponのような大幅な割引を行うことの危険性についてはOPEN Forumの“To Groupon or Not to Groupon: The Cost of Offering Deep Discounts”という記事がありました。この記事ではRice Universityが行った調査を引用していて、Grouponを利用した1/3の企業にとっては利益面ではプラスにならなかったと紹介しています。

それでGrouponをうまく活用するためのアドバイスが紹介されていて、例えば

  1. リピート顧客が取れるようにキャンペーンをデザインしなさい
  2. 新規の顧客層が狙えるようにしなさい
  3. 新規顧客に限定しなさい
  4. 空いている時間やリソースを埋めるように使いなさい

個人的にはあまり賛同しないアドバイスもありますが、50%以上の割引をするときは確かにいろいろな注意が必要でしょうね。

バイオの業界で割引キャンペーンを担当していた僕としては常に意識していたものばかりではあるのですが、よくまとまった記事だと思います。バイオの業界で割引キャンペーンをやってうまくいくと通常より2-3倍ぐらいは売れるのですが、この程度では利益面ではプラスになりません。というか、確かにバイオの試薬は粗利が多いのが一般的ですが、それでも30%引きして利益が増えるほどではありません。

僕なんかが割引キャンペーンを割と盛んにやっていたのは、どちらかというと広告宣伝費という気持ちからです。バイオの業界は広告宣伝が未発達で、効果がしっかり出そうな広告媒体はありません。しかもほとんどが代理店を介して研究者と接しますので、分かりやすい割引キャンペーンでもやってチラシを用意しておかないと、代理店の担当者はメーカーのことを紹介してくれないのではないかと心配してしまいます。新製品はまだいいのですが、古いけど良く売れている製品は影が薄くなりそうなのです。

また財布の問題もあります。広告を打つときは、年初に割り当てられた広告宣伝費を使うことになります。これはしばしば削減の対象になってしまいますので、あまり余裕のないところです。それに対して割引キャンペーンを実施するときの損失分(利益を失った分)は、最終的な利益にならないというだけの話ですので、年初に予算化されて固定された上限がある訳ではありません。それぞれの会社の考え方や予算管理の仕方、目標設定の仕方にもよると思いますが、少なくとも僕がいたところだと同じ金額を消費するにしても、広告宣伝を行うよりも割引キャンペーンを実施する方がよほど簡単でした。そういうこともあって、本来ならば値引きせずにバラエティーのある活動を行って製品をPRしたかったのですが、経費として使えるお金がないので仕方なく割引キャンペーンを良くやりました。

まとめ

確かに割引キャンペーンは一時的に有効なことが多いのですが、割引率を大きくしないと注目してもらえなかったり、利益が下がったり、リピート顧客が獲得できなかったり等といった問題をたくさんはらんでいます。紹介した記事にはいくつかアドバイスはありますが、それに沿うぐらいでは解決できない問題もたくさん残っています。

それでもバイオの業界でキャンペーンが多いのは、ひとことで言えばメーカーの無策なのですが、実際にはそうせざるを得ない業界構造や社内の構造(これは日本だけでなく世界的に)があって、メーカーがそれに流されているだけという側面があります。

バイオの買物.comのようなサイトがそういう業界構造を変革し、より幅広いPR活動が行われるようになればいいなと考えています。まだまだ先の話ですが。

カニバリゼーションという考え方はもう捨てよう

いま最も成功している、最もイノベーティブな会社の一つとなったApple社はカニバリゼーションを全く気にしていません。

このことは以前にもiPod Touchに関してこのブログで紹介しましたが、先日発表された新しいMacBook AirとiPadのカニバリゼーションの可能性についても同じ立場をApple社は取っています。

New York Timesの記事より;

Analysts said that the new computers were so light and priced so aggressively that they could compete with the iPad for the same customers.

In a conversation after the announcement, Mr. Cook said he was unconcerned by that risk. “If one cannibalizes the other, then so be it,” he said. He said it was better for Apple to cannibalize its own business than for another company to do so.

カニバリゼーションを全く気にしないのは、新しいMacBook Airと既存のMacBookやMacBook Proとのカニバリゼーションの可能性にも及んでいます。

PRスローガンでは明確に “The next generation of MacBooks” としています。本当に既存のMacBookと入れ替わるような存在になるかどうかは今後の製品展開を見ていかなければなりませんが、iPhone/iPadで新しい製品カテゴリーの開拓に自信をつけたAppleはかなり本気だと思います。

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Appleの企業文化はiPhoneに不利か

New York Timesの記事に“Will Apple’s Culture Hurt the iPhone?”というのがありました。

割とバランスが取れた記事です。MacintoshがWindows PCに追いやられたのと同じように、iPhoneがAndroidに追いやられるかどうかについて議論しています。

Openが必ずしも勝利するかどうか分からないと言ったことだとか、Appleにスケールメリットがあることとかに言及しています。

ただ非常に大きなポイントを忘れています。

iPhoneがAT&Tのネットワークにしか載っていないこと。そして最初からiPhoneがVerizonに載っていれば、Androidの躍進はかなり抑制されただろうということ。つまりオープンとかクローズドが問題ではなく、Appleとキャリアの権力闘争が一番の背景にあることがこの記事からすっかり忘れられています。

みんな、オープンvsクローズドが好きなんですよね。

Steve Jobs が喋る!

Appleの記録的な売上げと利益を報告したアナリストとの電話会議にスティーブジョブズ氏が参加し、いろいろな思いをぶちまけたことがウェブで話題になっています。文章に起こしたものはここで読めます。

スディーブジョブズ氏が考えるイノベーションについて、いろいろなヒントがありましたので、僕が面白いと思った箇所を取り上げたいと思います。

In reality, we think the open versus closed argument is just a smokescreen to try and hide the real issue, which is, “What’s best for the customer – fragmented versus integrated?” We think Android is very, very fragmented, and becoming more fragmented by the day. And as you know, Apple strives for the integrated model so that the user isn’t forced to be the systems integrator. We see tremendous value at having Apple, rather than our users, be the systems integrator. We think this a huge strength of our approach compared to Google’s: when selling the users who want their devices to just work, we believe that integrated will trump fragmented every time.

And we also think that our developers could be more innovative if they can target a singular platform, rather than a hundred variants. They can put their time into innovative new features, rather than testing on hundreds of different handsets. So we are very committed to the integrated approach, no matter how many times Google tries to characterize it as “closed.” And we are confident that it will triumph over Google’s fragmented approach, no matter how many times Google tries to characterize it as “open.”

Googleは自らオープンを戦略の柱にしていると語っています。それに対してスティーブジョブズ氏はオープンとかクローズドかというのはあまり意味がないと反論しています。そうではなく、最終顧客にとって何が一番良いか、そしてアプリを開発してくれるソフトウェアデベロッパーにとって何が一番良いか。それだけが問題だと考えているようです。

そして何が一番良いかの一つの結論として、Appleは製品ラインアップを減らし、重複する機能を削減し、常に整理整頓されたポートフォリオを持つようにしています。MacでもiPodでもそしてiPhoneでも。

(iPadとその競合について)And sixth and last, our potential competitors are having a tough time coming close to iPad’s pricing, even with their far smaller, far less expensive screens. The iPad incorporates everything we’ve learned about building high-value products, from iPhones, iPods and Macs. We create our own A4 chip, our own software, our own battery chemistry, our own enclosure, our own everything. And this results in an incredible product at a great price.

垂直統合の結果として、iPadは非常に製造コストを安くできているという話です。一般的な定説では垂直統合は高コストの製品につながります。しかしこのブログでも紹介していますように、特にイノベーションが盛んに行われている市場のステージでは垂直統合によってむしろ価格は安く抑えられます(議論が十分に練れていなくて申し訳ありませんが)。

The reason we wouldn’t make a seven-inch tablet isn’t because we don’t want to hit a price point, it’s because we don’t think you can make a great tablet with a seven-inch screen. We think it’s too small to express the software that people want to put on these things. And we think, as a software-driven company, we think about the software strategies first. And we know that software developers aren’t going to deal real well with all these different sized products, when they have to re-do their software every time a screen size changes, and they’re not going to deal well with products where they can’t put enough elements on the screen to build the kind of apps they want to build.

まず、Appleは自分たちを”software-driven company”と考えていて、何よりも最初にソフトウェアの戦略を立てているというのが面白いです。考えてみると当たり前なのですが、改めて言われるとなるほどと思ってしまいます。

そしてスティーブジョブズ氏いわく、7インチのタブレットでは有用なソフトを作成するにはサイズが足りないとのことです。興味深いことに、7インチタブレットを発売する予定のメーカーにしても、7インチのサイズを高く評価している評論家にしても、ソフトウェアの使い心地についてはほとんど語っていないように思います。そうではなくて、大きさとか重さとか持ち運びのしやすさ等を議論しています。Appleは自分たちを”software-driven company”としていますが、競合は逆にまだ”hardware-driven company”であって、評論家たちもまだ”hardware-driven critics”のように感じられます。別に”hardware-driven”であること自体には何の問題もないのですが、ただAppleやその競合を批評するときにはこの視点を忘れてはいけないと思います。

ちなみに7インチタブレットで最も話題性のあるSamsung Galaxy Tabの紹介ビデオを見る限り、掲載されているソフトのUIはsmartphone用のものを大きくしただけのように見えてしまいます。iPadのアプリの多くは画面を複数の領域に分けて、一度に多くの情報を表示するようにしています。それに対してGalaxy Tabのソフトはsmartphoneと同じように、一度に一つの情報だけを表示し、あとは画面を切り替えていくというアプローチを取っているようです。スティーブジョブズ氏の言わんとしていることはこの辺りだと思います。

バイオ業界との関連で思うこと

メーカーが販売しているキット製品を評して、「若い人は原理も解らずに使うから困る」とか「中身が解らないからトラブルシューティングができない」とかよく言われます。クローズドな製品であることに対する不満です。

僕も近いうちに、キット製品におけるオープンとクローズドについて考えてみたいと思います。

それと”software-driven company”ということと関連して、各メーカーおよび代理店は自分たちが何-drivenかをよく考えたら良いと思います。それは製造プロセスかも知れないし、物流システムかもしれません。新技術を発見し育てる能力かも知れないし、マーケティングや営業力かもしれません。問題解決力や製品サポート力かもしれません。何となく市場を見ていると、自社の本当の強みを理解できずに変なことに手を出しているメーカーが多いような気がしています。

AppleのApp Storeとバイオの買物.com

バイオの買物.comって、一見すると価格.comと同じように思われてしまって、メーカーの価格競争を促すだけに見えてしまいがちです。

でもそれは正しくないと思っています。まず第一に、バイオの業界では末端の小売価格(代理店の販売価格)が不透明なので、バイオの買物.comでは希望小売価格しか載せていません。ですからバイオの買物.comの掲載されている情報だけでは最安値は見つからないのです。

もっと重要な違いは、価格.comを見る人の最大の興味は価格であるのに対して、バイオの買物.comに来る人の興味は製品の有り無しであるという点です。

logo200.pngバイオの世界は何百万と製品があります、非常な勢いで新製品が登場します。一昔前は無かったような製品がどんどん販売されています。この結果、せっかく秀逸な製品があっても、研究者がそれを見つけられないという事態が発生します。特にその製品がトップブランドから発売されたものではなく、中堅以下の会社から売られているものの場合は困難です。あまりにも製品が多く、会社も多いので、研究者はなかなかトップブランド以外、もしくは参考にしている論文に記載されているブランド以外を探すことはできないのです。

バイオの買物.comはこの問題を解決したいと考えています。こうすることによって「“Dwarfs standing on the shoulders of giants”を手伝う仕事」を実現したいと思っています。

app store icon.pngそのときに参考になるのがAppleのApp Storeです。iPhoneやiPadを持っている人には馴染みのサービスですが、ひとことで言えばiPhone, iPad用のソフトをすべて取り揃えているオンラインストアです。すべてのソフトはここで発売されていて、逆にここ以外では発売されていません。

エンドユーザにとっての利便性は、ソフトを買うときはApp Storeに行きさえすれば良いということです。Googleで検索し、あっちこっちのウェブサイトを見比べつつ、何かを見落としているのではないかと心配すること無く、簡単に目的の製品を探すことができます。しかもアップデートがあれば一括してApp Store経由でアップデートが行われますので、非常に便利です。

まさにバイオの買物.comが目指している形に似ています。

そしてソフト開発者にとってのメリットとして言われているのは、小企業であってもマーケティングや代金請求のことに頭を悩ます必要がなく、とにかくソフト開発とサポートに集中できることです。小企業・大企業の区別なく、App Storeに表示されるときは平等です。魅力的な製品であり、適正な価格を付けてあれば、ブランド力のある大企業の製品に勝つことができます。

魅力的な製品を作って、サポートもしっかりやっていれば、大企業にとってもApp Storeは魅力的なシステムです。しかしブランド力やマーケティング力だけで劣悪な製品を売っている場合は、痛い目に遭うでしょう。

これもバイオの買物.comの目指しているところです。

App Storeの成功もあって、Android, Palm, Microsoftのプラットフォームなども同じようなシステムを準備しました。よく考えてみると、Amazonもこれに良く似た面があります。レコメンド等のPRはAmazonが勝手にやってくれるのですから。

まだまだそこまでは全然行っていませんが、App Storeを目指してがんばります。

市場の力関係とイノベーション、そして顧客の利益

「Appleは単に最高の製品を作りたいだけだ」と昨日のブログに書きました。

今日、Elia Freedman氏が書いた“Fighting The Wrong Fight”という関連する記事を見つけました。

Eliaが言っているのはこうです。

スマートフォンではAppleとGoogleの戦いが重要ではないんだと。重要なのは携帯メーカーとキャリアの間の戦いだと。そして携帯業界のイノベーションを阻害し、より優れたユーザエクスペリアンスを妨害していたのはキャリアだったとしています。

キャリアが携帯電話を販売し、通信サービスを提供します。どのようなソフトウェアがインストールされるかを決める権限を持ち、何ができて何ができないかを決定してきました。日本においてもそして米国においても、キャリアに力があったのです。それがiPhoneの場合は、力関係がひっくり返っています。Appleが決定権を持っているのです。この力関係をひっくり返してこそ、Apple流のイノベーションを携帯電話に持ち込むことができたとも言えます。キャリアにはそれだけのイノベーションをする能力もインセンティブもありませんから。

ただ残念なことにGoogleのAndroidはオープンであることを逆手に取られて、キャリアに利用されてしまっているとこの記事では解説しています。

さてバイオの買物.comとの絡みで僕がいつも考えているのは、ライフサイエンス研究用製品の市場がイノベーションを生み、そして顧客に利益をもたらす構造になっているかどうかということです。もしや従来の携帯電話市場と同じように、イノベーションを生み出さないところに力関係が傾いていて、そして顧客の利益が損なわれてしまっているのではないかと。研究の発展を促すためには、既存の市場構造を変革させ、そして顧客に力がシフトするようなものにして行かなければならないのではないか。常にそう思ってきました。

バイオの買物.comはどのようなプラスの効果を生み出しうるか。僕の考えをちょっとだけ紹介します。

  1. ブランド力に関わらず、顧客のために努力している会社の製品が売れる : バイオの製品は猛烈な数がありますので、研究者はどうしてもブランドでフィルターをかけて、探すのを楽にしてしまいます。すべてのメーカーのカタログを探すよりは、馴染みのブランドに絞って探した方がずっと楽です。でも各メーカーの製品を簡単に比較できるのなら、ブランド力のフィルターはあまり必要なくなってきます。ブランド力に関わらず、適正な価格であり、十分サポートを提供し、品質の良いメーカーの製品が売れやすくなります。
  2. 営業担当者等がより充実した製品知識を入手しやすくなる : この業界の営業担当者は製品知識があまりありません。もともと製品が多いのもありますが、各メーカーが無節操に製品分野を拡大した結果、営業担当者としてはますます難しくなってきました。バイオの買物.comがそういう人の勉強のツールになれば、より顧客のニーズにあった提案ができるようになるのではと期待しています。
  3. イノベーティブな製品が売れやすくなる : メーカーが新しくて革新的な製品を開発しても、それをマーケティングして普及させるのは簡単ではありません。次世代シーケンサーほどに革新的であればNatureとかが取り上げてくれますが、例えばClontechのIn-Fusion PCRクロニングキットとか、タンパク質レベルで発現を調節できるProteoTuner Systemとかはなかなか知名度が上がりません。バイオの買物.comによってこういう製品が注目されやすくなるのではないかと期待しています。

メーカーのイノベーションが促進され、サポート力が注目され、企業努力による価格抑制が顧客の目に留まりやすい市場環境。そしてブランド力や代理店との力関係に頼った顧客の囲い込み等が行いにくく、顧客価値の創出の結果として売上げが伸びて行く市場環境。現状が果たしてそうなっているかを常に考えながら、より良い方向に持って行くために貢献できたら良いなと思っています。

ライフサイエンス分野での携帯ねたの続き

まだ気になって、考えてしまっています。他の仕事をしないといけないのにもかかわらず。このブログを書いて、区切りにしようと思います。

そもそも、どうしてもこんなに気になってしまうのだろうとも考えてしまいます。おそらくは、携帯電話の使い方については世代間や性別間のギャップがありすぎるからだと思います。いろいろな意味で中年の僕にとって、携帯サイトというのは実感として全く理解できない世界なのです。携帯サイトについて勉強したり人に聞いたりしても、自分の実感に照らし合わせたとき腑に落ちないのです。ですからいつまでも成仏できない幽霊のように、僕の頭の中で考えがさまよっているのでしょう。

勉強してみた結果、考える上で大切だと思えるポイントがいくつかありました。

くつろぎの時間に使われることが多い

佐野正弘さんという方がMarkeZineに掲載している記事が非常に参考になりました。まずは携帯が使用されるのは移動中よりも自宅がメインという記事です。もう、実はここから既に僕の実感とデータが乖離してしまっています。PCサイトヘビーユーザについては移動中に携帯電話を使用することが多いということなのですが、逆にPCサイトのライトユーザでは自宅でくつろいでいる時間、特にテレビを見ているときに使うことが多いというのです。しかもテレビで見た製品を、直感的に、一点買いすることが多いというのです。

これをライフサイエンスのマーケティングに当てはめますと、以下のことが言えるかと思います。

「キャンペーンのチラシにはQRコードをつけて、携帯サイトと連動させた方が良い」

どういうことかと言いますと、メーカーが研究者にまき散らしている(もとい、配布している)チラシはお茶机付近においてあって、休憩でお茶を飲むときにチラチラ見ることが多いかと思います。これは研究室にいるとはいえ、家でテレビの前でくつろいでいる状態に少しは近い場面です。もちろんチラシには十分に内容を書いているつもりかもしれませんが、QRコードをチラシにつけて、追加の情報を携帯サイトから見られるようにすると面白いかもしれません。

最低でも、レスポンスがどれぐらいあったかを把握することはできるでしょう。PCのサイトはチラシを配布しなくても訪問者が多く、効果測定をする目的ではノイズが高くなってしまいます。またチラシを見た人がわざわざ自分のデスクに移動してURLを打ち込むことに比べれば、QRコードを読み取る操作は簡単です。ですから高いS/N比でチラシの効果を測定できると僕は思います。

じっくり調べるより、思ったときにすぐに決める

これも佐野正弘さんの同じ記事に書いてあった内容ですが、PCのショッピングサイトの場合はまとめて5商品を購入する利用者が多いのに対して、携帯サイトの場合は1, 2商品が圧倒的に多いそうです。また、思い立ったときにすぐに起動できるという特徴も大きいと佐野さんは述べています。そういった特性を考えると、高額の商品を買ってもらうよりも、既存顧客のファン意識を高めるために利用するのが良いとも述べています。

ということは、製品を購入してもらうよりはもうちょっとユルいことに向いていると考えていいかもしれません。

例えばメルマガへの登録というアクション、セミナー参加というアクション、資料請求というアクションなどは無料でできるものばかりなので、潜在顧客が思いつきでやれてしまうものです。携帯サイトはこういうことに強みを発揮するのかもしれません。そしてアクションを起こしてもらうきっかけとして、キャンペーンチラシにQRコードをつければ良いのだろうと思います。

つまりマーケティングの流れとしては、1) キャンペーンチラシに、対象商品説明とは別に、資料請求やセミナー、メルマガ登録をするためのQRコードを載せておきます 2) こうやって、潜在顧客との関係をリフレッシュします 3) その関係を維持拡大し、将来の購買につなげます。

まとめ

画面が小さくて情報が載せられないなど、一見すると研究者向けのマーケティングにあまり活用できなさそうな携帯サイトではあります。しかし、まだ全く開拓されていないアイデアが多いような気もしてきました。

携帯サイトが活用されていけば、研究者がくつろいでいる時間に企業と顧客の関係作りがされていくようになるかもしれません。それができれば、とても良い方向だと思います。

JPGという読者投票型写真雑誌がつぶれたそうです

僕は全然フォローしていませんでしたがJPGという読者投票型写真雑誌が1月5日をもってつぶれるそうです。

これに対して、Robert ScobleというMicrosoft出身のIT評論家がブログを書いています。

そのブログの中には、バイオの買物.comを含め、インターネット広告で食っていこうというウェブサイトすべてにとって重要な教訓が記されています。

以下の状態ならまずいよって結論をしています。

  1. ユーザ層が新しいもの好きの人ばかり。
  2. 広告主に対して伝えられる、明確なユーザ層がいない。単に写真好きを集めたというのでは、十分じゃない。
  3. 製品を買おうと思っているユーザを集めていない。例えば良い写真雑誌のほとんどは、表紙に作品を飾らず、カメラ機材を表紙にしている。そうしていないのなら、道は険しい。
  4. 広告主がユーザとコミュニケーションする方法を提供していない。
  5. 棚スペースが得られていない。ユーザが目にしやすい場所にウェブサイトがプロモーションされてなくて、十分なユーザ数が集まらない。

バイオの買物.comならこのうちの半分ぐらいは何とかなりそうなところに来ています。残りの半分は2009年の課題です。

価格.comの記事

バイオの買物.comがビジネスモデルとして最も参考にしているのは価格.comですが、カカクコム経営企画部広報室長との取材を通して、詳細に紹介している記事がありました (無料登録が必要)。

例によって、僕が感じたポイントを紹介します。

収益モデルその1:小売りサイトへの集客 (Pay Per Click)

価格.comのウェブサイトから、小売業者のウェブサイトへのリンクをユーザがクリックしたときに料金が発生する仕組みです。そのユーザが実際に購入したかどうかは関係ありません。

ちなみに、このモデルにおける事業者の対象は家電製品などを販売する店舗が多く、事業者は商品登録せずにカカクコム側が登録した商品マスターに対して価格登録(入札)する形式になっているのが特徴である(商品マスター自体は、価格.com側が人海戦術で登録しているとのことであり驚きの事実である!)

平成21年3月期 第1四半期決算短信においては売上高は485百万円でした。

バイオの買物.comが現在、抗体検索サイトで運用しているのはまさにこのタイプの広告です。

収益モデルその2:コミッション (Pay Per Performance)

価格.comのウェブサイトから小売業者のウェブサイトにユーザが移動し、実際に製品を購入したときに料金が発生する仕組みです。ユーザが小売業者のウェブサイトに行くだけでなく、実際に購入したときにのみ料金が発生します。

平成21年3月期 第1四半期決算短信においては売上高は752百万円でした。

実際に売り上げの数字を見てもわかりますように、Pay Per Clickよりはこっちの方が広告主にとっては魅力的な広告スキームです。しかし日本のバイオの業界ではインターネット直販がまだほとんど行われていませんので、残念ながらまだこのシステムは使えません。

収益モデルその3:バナー広告などディスプレイ広告

価格.com創業時からの広告モデルです。

平成21年3月期 第1四半期決算短信においては売上高は552百万円でした。

こちらは仕組みは簡単なのですが、広告主にしてみれば効果が見えにくいという欠点があります。また実際に計測してみると、あまり効果がないように見えることも多々あります。売上高としては大きな数字になっていますが、価格.comが深く関係した価格.COM 賢者の買い物という本を読むと、実際にはこの広告システム単独ではそれほどうまくいかなかったようです。というのも、この広告を出していなくても、価格.comではどっちみち最安値の販売店をリストしてくれていたからです。

そこで価格.comがやったのは、広告を掲載してくれなかった小売店は、たとえ価格が最安値であっても、ときどき掲載をしなかったりすることだったそうです。逆に広告を掲載していれば、確実に掲載してあげるようにしていたとのことです。

こういうバナーが大きく効果を上げるためには、そもそものマーケティングプロジェクトが非常に魅力的である必要があります。価格.comでは「少数精鋭の営業要員で直接契約をとっている」とのことですが、そうやって絞った活動をしないとなかなかよい成果が出せないだろうと思います。

バイオの買物.comではまだこのタイプの広告は実施していませんが、検討中です。

収益モデルその4:マーケディングデータの提供

価格.comの集積される口コミ情報などをもとに、メーカーやシンクタンクに情報を提供するサービス。

平成21年3月期 第1四半期決算短信においては売上高は86百万円でした。

日本のバイオの業界ではシンクタンクなどによる情報はあるにはありますが、基本的には全く信用できません。その結果、メーカーはマーケティングのための情報が無くて困っています。そういう意味で、このようなマーケティングデータというのは日本のバイオ業界では重宝されるはずです。

バイオの買物.comでは、これを実施するための準備を行っています。

まとめ

商品マスター自体は、価格.com側が人海戦術で登録しているとのことであり驚きの事実である!

というのがありましたが、このような仕組みだとメーカーや小売業者がただ乗りできてしまい、うまく収益が上がらないのではないかと考えがちです。

価格.comの例は、実際にはそうではなく、むしろこっちの方が儲かることを示しています。もちろん最初に無償で情報を掲載していくという大きな初期投資が必要ですが、それがかえって参入障壁にもなり、永続的な利益の源泉になります。またその初期投資は金銭的なものではなく、人海戦術的なものなので、「がんばり」と「工夫」でなんとかできるところでもあります。

少なくともバイオの買物.comではそうと信じて、すべての製品を載せることにより、将来的にはBioCompareよりも良い製品比較サイトを作り上げたいと思っています。

長さは重要です!454シークエンサーの面白い広告

Roche Applied Scienceの454シークエンサーの広告。

“Size Matters”というのはアメリカではよくあるギャグで、男性の下半身の大きさへのこだわりを意味しています。

そして “Length Matters”。

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