Applied BiosystemsのTaqMan® Assays QPCR Guarantee Programって素晴らしいアイデアだと思う件

Applied Biosystems (Life Technologies)がTaqMan® Assays QPCR Guaranteeというのを始めるそうです。

内容はこうです。

  1. カスタムTaqMan Assayを除くすべてのpre-designed TaqMan Assayが対象です。
  2. 実際に購入してみて、思い通りの性能が発揮できなければ(結果が出なければ)、必要に応じて無償で交換してくれます。
  3. ただし結果が出ない理由がAssay側にあるのか、それともサンプルにあるのかを確認するために、事前にテクニカルサポートに問い合わせる必要があります。

NewImage.jpg細かいことは十分に調べていませんが、このアイデアはとても素晴らしいのではないかと思います。

顧客である研究者にとってみて得なのは一目瞭然です。再実験の手間は仕方ないとしても、追加の費用が発生しないというのは大きな安心です。メーカーがまじめに向き合ってくれるという期待も生まれます。

そしてこの仕組み、実はメーカー側にこそメリットがあるのではないかと思います。Pre-designed TaqMan Assayの仕組みがそうさせています。以下に解説します。

  1. Applied BiosystemsのPre-designed TaqMan Assayは非常に膨大な数になります。ブローシャーの12ページにもありますが、製品はRefSeq (human, mouse, rat)を網羅し、その他のターゲットも多数あります。19の生物種を対象になんと120万 Assayがデザインされています。
  2. 120万 Assayというのはべらぼうに大きい数字です。仮に1アッセイが¥10,000で合成できたとしても(ABIの定価は¥39,000)120億円かかります。これはInvitrogenの日本国内年間売上げに相当する金額です。
  3. このため、Assayのほとんどはコンピュータの中で設計されただけの段階であり、実際に合成されている訳でもなければ、実験的に性能が確認されている訳でもありません。
  4. それでも安心して研究者に利用してもらうにはどうすれば良いかを考えなければなりません。販売前の品質管理が現実的でないのであれば、顧客に品質管理の協力をしてもらうのは一つの選択肢です。

通常であれば、仮にうまくいかないアッセイに当たったとしても、多くの研究者が泣き寝入りすることが多いでしょう。「研究用試薬なんて所詮そんなもの」という割り切りで、メーカーに連絡もしないで損をかぶるでしょう。

一部の研究者はテクニカルサポートに連絡をしてくるでしょう。そしてテクニカルサポート側とすれば、いろいろな面倒が起こると大変なので、その場その場で代替品を無償で提供したりするでしょう。通常であればそのコストは原価ではなく、販売費用に計上されてしまいます。ですからこのようなケースが頻発するようであれば予算の振り分けに影響が出てしまいます。

それに対して今回のように品質保証プログラムを実施すれば、良い結果が得られなかった研究者は非常に高い確率でフィードバックをくれます。そして社内にこれを吸い上げる正式なルートがあるということなので、フィードバックはきっちり製品開発部門に伝わり、次製品の改良に活かせます。その上、テクニカルサポートも非常に明確で分かりやすい対応が可能になり、顧客への接し方も良くなるはずです。経理上の問題にしても、このプログラム内であればコストはすべて原価に反映されますので、販売部門の予算への影響がありません。

もう一つ、このプログラムのメリットを大きくしているのは、代替品が簡単に作れるということです。所詮は計算機で設計して化学合成するだけの話ですし、通常のターゲットであれば、計算機がはじき出すデザイン候補は複数あるはずです。そこである1つのアッセイがうまくいかなかったら、計算機がひじき出した2番目の候補を作れば良いのです。そしてこれを顧客に送って、評価してもらえれば良いのです。

抗体の場合はこうはいきません。同一のターゲットに対して何種類もクローンがある訳ではありませんので、代替品を出すと言っても同じクローンしか出せないことの方が多いでしょう。

なおsiRNAはTaqmanアッセイと同様に計算機の中でのデザインが可能ですので、すでに同じようなアプローチが複数のメーカーでとられていると記憶しています(ちゃんと調べていませんが)。ただTaqmanアッセイの方にメリットがある理由は、実験結果がよりクリアだからです。siRNAの場合は生細胞が相手になるので、顧客が行った実験をメーカーがどれだけ信用するかは難しくなるでしょう。とはいうものの知的所有権の関係で競争が激しいので、siRNAに関してはメーカーは積極的にいろいろな策を打たざるを得ません。

感想

このようにTaqMan® Assays QPCR Guarantee Programは顧客にとってもメーカーにとっても非常にメリットのある、かなりウィンウィンの企画だと感じました。そしてそのメリットはTaqMan Pre-designed Assaysの技術およびビジネス上の特徴が背景にあります。

とは言うものの、同じように双方ともメリットのある企画はきっと他にもたくさんあるはずです。一所懸命になって頭をひねらないといけないかもしれませんが、ぜひ多くのメーカーにがんばってもらいたいです。その一助としてバイオの買物.comが役立つことが、僕の大きな願いです。

Google TVのレビュー記事

New York TimesのDavid PogueによるGoogle TVのレビュー記事がありました。

“Google TV, Usability Not Included”

要点は

  1. Google TVは機械好きの人には面白いかもしれませんが、一般の人には向きません。
  2. キーボードはSonyの場合はXBoxコントローラーとキーボードの組み合わせ、Logitechの場合はトラックパッド付きのフルキーボードとなっています。
  3. 使い方が分かり難い。
  4. 大手のTVネットワークはGoogle TVがウェブページに接続するんをブロックしているので、Google TVからオンラインの番組が見られません。それなのにこれらの番組はGoogle TVのテレビ番組一覧に表示されてしまっています。

かなりぼろぼろに書かれてしまっています。

GoogleTV.jpg

「若者が海外勤務を嫌うようになった」ってどれだけ本当か

ふと思いました。

「最近の若い社員は海外勤務を嫌う」ということがテレビで放映されているのを昨日見ました。同じような論調の新聞記事もよく見かけます。

近頃の若者の内向き傾向を批判的に論じたり、あるいはこれからの日本は海外に出て行かなければならないとハッパをかけたりするときに、このことがよく取り上げられます。具体的には最近の社員に聞くと、海外勤務を希望する人数がガクッと減って、ずっと日本にいたいという人が多いらしいのです。

さてこのような傾向が本当にあるのかないのか、実際に調査をしている訳ではないのですが、どうも鵜呑みには出来ないデータじゃないかなと思います。というのも一昔前の「海外勤務」と現代の「海外勤務」って全く状況が異なるからです。

一番端的なのは、赴任先が変わったということです。昔の海外勤務であれば欧州や米国を想像しましたが、今の赴任先は上海を筆頭にアジアが断然多くなっています。また日本も相対的に貧しかったので、日本よりも豊かな生活の国に行くのが昔の海外赴任でした。それに対して今の海外赴任は、日本よりも生活水準が低いところにいくのです。

昔だったらあこがれの地に、会社からの手厚い手当をもらい、優雅に数年間住めるというのが海外赴任でした。私も父親の仕事の関係で幼少時代を英国で過ごしましたが、それは確かに良い生活でした。

それが今の海外赴任は、日本よりも貧しい国で、現地の人のパワーに圧倒されながら生活するものです。住めば都ということも多いとは思いますが、海外赴任のイメージは今と昔とでは全く違います。

「日本の若者は内向きになった」と残念がっている人は、日本と他国の関係が全く変わったということを再認識した方が良いと思います。これは少なくとも部分的には日本が豊かになったことの結果であり、経済の焦点が発展途上国に当てられていることの結果なのです。

それを考慮した上で、今後の日本の方向を考えるのが正しいやり方ではないでしょうか。

Appleの競合製品は皆Safariベース:イノベーションは土台が大切

スマートフォン市場、特にビジネス向け市場で圧倒的な優勢を誇っていたResearch in Motion (RIM)のBlackberryですが、最近AppleのiPhoneがそのシェアを越えたということが話題になっています。

それに対するResearch in MotionのCEO Jim Balsillieが反論というか強がりを言っている記事がありました。

RIM CEO Jim Balsillie To Steve Jobs: ” You Don’t Need An App For The Web”

この中で、iPhoneの大きな強みがApp Storeにある膨大な数のアプリであることに対抗して、RIMのアプローチはすべてをブラウザでやることだと主張しています。

Balsillie went on to contrast the Blackberry approach to Apple’s when it comes to web apps. There may be 300,000 apps for the iPhone and iPad, but the only app you really need is the browser. “You don’t need an app for the Web,” he says, and that is equally true for the mobile Web. The debate over mobile apps versus the mobile Web. Blackberry is betting on the Web, much like Google.

近々発売される予定のPlayBook Blackberry Tabletにしても、アプリはないかも知れないけれどもWebブラウザがすごく早いよと自慢しています。

でもBlackberryのブラウザはAppleが開発したWebkitベース

Safari.jpgしかしJim Balsillieが自慢しているWebブラウザは実はAppleが開発し、Safariにも使われているWebkitがベースです。

WebkitはAppleが中心に開発しているオープンソースのブラウザ基盤技術で、Nokiaブラウザ、Google Chrome、Palm WebOSにも使われています。次世代スマートフォンの中では圧倒的なシェアを誇っているどころか、現時点ではデファクトスタンダードの感すらあります。

Jim Balsillieが自慢しているWebブラウザの良さって、ほとんどがAppleが開発した技術に由来するのです。なんか変ですよね。RIMだけでなく、iPhoneに対抗しようという製品もすべてAppleの技術を中心にしています。

こんな状況なので、スマートフォンでイノベーションを起こしているのはAppleだけで、Googleを含めた他社は単に追随しているだけというのも仕方がないように思います。

イノベーションは「今」を犠牲にしてでも、土台が大切

AppleがWebkitに取りかかったのは2002年。Mac OS X用の新しいブラウザ、Safariを開発するのが目的でした。オープンソースだったKHTMLをベースに始まりました。

当時はMozillaのGeckoエンジンの方がはるかに成熟していて、そっちをベースにすれば多くのウェブサイトを問題なく表示できるブラウザがすぐに作れるのにと思ったものです。KHTMLをベースにしたため、初期のSafariは多くのウェブサイトで問題を起こし、しばしばFirefoxを立ち上げなければなりませんでした。それでもAppleがKHTMLを選択した理由は以下のメールに記されています。

Greetings from the Safari team at Apple Computer

The number one goal for developing Safari was to create the fastest web
browser on Mac OS X. When we were evaluating technologies over a year
ago, KHTML and KJS stood out. Not only were they the basis of an
excellent modern and standards compliant web browser, they were also
less than 140,000 lines of code. The size of your code and ease of
development within that code made it a better choice for us than other
open source projects. Your clean design was also a plus.

ユーザからすると最初の頃のSafariは確かにスピードは良かったのですが、バグが多くて必ずしも実用的ではありませんでした。Webkitのバグがなくなり、ほとんどのウェブページを問題なくレンダリング出来るようになるまでは何年もかかりました。その間はKHTMLを選択したのは本当に正しかったのか、ユーザとしては疑問に思うことも少なくありませんでした。当時のKHTMLはまだ完成度が低く、完成させるまでにはたくさんの開発が必要だったのでしょう。

しかし今にして思えば、Appleは最高の判断をしました。コンパクトで効率的なWebkitがあるおかげでiPhoneにフルブラウザを搭載できました。他の技術で代用が可能だったか(例えばGeckoをベースに)と言えば、他メーカーもこぞってWebkitを使っていることから判断すると、それはあまり現実的ではなかったとも思えます。

Webkitがここまで成功した理由を考えると、以下に要約できると思います。

  1. Geckoという完成した技術を使わず、土台がきれいでしっかりしているという将来性を見込んでKHTMLを選択しました
  2. その際、はっきりと「今」を犠牲にして、「未来」を選択しました
  3. そしてその「未来」を実現するべく、2002年から継続して開発を行いました

かなり勇気のいる決断をしています。

でもそれがイノベーションの肝なのだと思います。

Google, メーカーを訴えてくれ:AndroidのJava特許侵害

GoogleがAndroidの中でJavaの特許を侵害をしているというOracleの訴えについて、Googleからの反論があったそうです。

反論の根拠はいくつもあるのですが、その中の一つ

Sixteenth Defense – Third Party Liability
24. Any use in the Android Platform of any protected elements of the works that are the subject of the Asserted Copyrights was made by third parties without the knowledge of Google, and Google is not liable for such use.

要するに、GoogleはAndroidによって何ら収入を得てる訳ではないし、オープンなプラットフォームですよ。特許侵害あったとしても、Googleは知らないし責任はないよという話です。

Androidベースの携帯を作っているメーカーとしてみれば、GoogleはOracleからの訴えに際して何も守ってくれませんよ、あくまでも自己責任なのかという話です。

Oracleから訴えられるリスクを抱えてまでAndroidベースの携帯電話をいつまで売り続けるのか。ある時点で個別にOracleと交渉するべきなのか。メーカーにとっては悩ましい問題となりそうです。

Apple TVが今度こそ売れそうな気配

Apple TVが今度こそ売れそうな気配がしています。

僕のTwitterのTLでもApple TVを買って、ビデオレンタルを早速している人がいます。これは日本での話。

また一番はっきりしているのがついさっきからインターネット上で話題になっているニューズ。

Amazon.comの電子機器のカテゴリーにApple TVが12-13位で登場したという話題です。もちろん米国での売上げの話です。

まだまだ勝負はこれからですが、広告を全然流していない段階でこれなので、もっともっと期待できるのではないでしょうか。

GizmodoのGalaxy Tab Review

GizmodoのSamsung Galaxy Tab Reviewが出ていました。かなり辛口です。

“Samsung Galaxy Tab Review: A Pocketable Train Wreck”

Samsungの技術力や製品企画力がどうのこうのではなく、そもそも7インチのタブレットは意味があるのかという観点での議論が多いです。

If you take iPhone apps and simply scale them up for the iPad, most of them don’t feel right. If you take Android apps and scale them up for the Tab, the majority of them—Twitter, Facebook, Angry Birds—work perfectly. (Except for when they don’t, like The Weather Channel.) That’s because the Galaxy Tab is small enough that apps simply blown up a little bit still fundamentally work. Which means, conversely, that there’s almost no added benefit to using the Tab over a phone. It’s not big enough. Web browsing doesn’t have greater fidelity. I don’t get more out of Twitter. A magazine app would be cramped.

現時点ではスマートフォン用のアプリを拡大表示したものしかありません。でもスクリーンが小さい分、拡大率も小さく、結果としてあまり問題がありません。議論を裏返すとスマートフォンを使うのと比べると、Galaxy Tabを使うメリットはほとんどないという結論です。

In other words, you get the worst of a phone’s input problems—amplified.

文字入力に関してはスマートフォンの入力のしにくさをそのまま引き継いでいるということです。しかも一段と悪くなっているとまで言っています。

The browser is miserable, at least when Flash is enabled. It goes catatonic, scrolling is laggy, and it can get laughably bad.

Flashをオンにしている状態では、ブラウザは惨めそのものだと言っています。技術的に言えばFlashは迷惑なんですね。マーケティング的にはiPadとの差別化のために含めたくなるのでしょう。

Typically, the point of a compromise is to bring together the best of both sides. The Tab is like a compromise’s evil twin, merging the worst of a tablet and the worst of a phone. It has all of the input problems of a tablet, with almost none of the consumption benefits.

スマートフォントとタブレットの妥協点を探った製品ゆえに、問題が噴出しているという結論です。

ただし、妥協点を探った中間的な製品が難しいというのは、現実社会でマーケティングを見つめて来た人には当然分かる話です。たぶん最初から「妥協」狙ったのではなく、以下のように製品企画の議論は進んだと思います。

  1. iPadと対抗するタブレットを作ろう
  2. まずは10インチを検討してみよう。狙いとしては、iPadより多機能で、そして価格が安いものを作りたい。
  3. 実際に製造コストを推定したら、すごく高くなってしまった。これじゃ話にならない。(シャープガラパゴス10.8インチモデルの価格が今月中に発表されると思いますので、そのときにApple以外が10インチを作るとどれぐらい高いのかが分かるかもしれません)
  4. 10インチのタブレットだとアプリを専用に開発しないといけなさそうだ。サードパーティーも10インチ用のアプリを開発してくれないと。でもGoogleですらまだタブレット用のOSを用意していない。10インチタブレット用のサードパーティーアプリはまず期待できなさそうだ。
  5. 7インチならなんとか価格的にすり合うし、Androidスマートフォンのアプリを拡大しても無様にはならない。よし7インチでいこう。
  6. マーケティング的には苦しいけど、これしか作れないのでやるしかない。

要はSamsungだってバカじゃないし、マーケティング部隊はすごいという話なので、市場からかけ離れた間抜けな発想はしないはずです。それでも7インチという中途半端な製品を作ることになったのは、iPadの価格設定が安すぎたこととGoogleの準備ができていなかったということで、Samsungには他に選択肢が残されていなかったからだと思います。

持ち運びがしやすいというメリットを最初から積極的に考えていた訳ではないと思うのです。

Samsungの人、気の毒….

「中間」カテゴリーの危うさ:Android 7インチタブレットの競合は本当にiPad。それともスマートフォン?

ようやくiPadに対応し得るタブレットとしてSamsung Galaxy Tabが注目されていますが、評論家の意見を読んでいるとなんだか論調がぶれているような気がします。

要は、Galaxy TabはiPadの競合なのか、それとも新しいカテゴリーなのか。あるいはスマートフォンと競合するのか。

New York TimesのDavid Pogue

But the Galaxy doesn’t feel like a cramped iPad. It feels like an extra-spacious Android phone.

WiredのChristopher Null

The Tab requires some retraining in the way you use a mobile device — it’s somewhere between a phone and a regular tablet — but once you get it, it’s a pleasure to use. The Tab ultimately reveals itself not as a competitor to the iPad but as a new class of mobile devices: a minitablet that is designed to go everywhere you do.

Read More http://www.wired.com/reviews/2010/11/galaxy_tab/#ixzz14zdHpWy9

「ヘー、新しいカテゴリーなの」って聞くと聞こえはいいのですが、問題はそんな新しいカテゴリーにニーズがあるのかないのかです。

Steve Jobs氏の大失敗作、G4 Cubeを思い出してみるといいと思います。Steve Jobs氏がAppleに戻ったとき、あまりにも製品ポートフォリオが訳が分からなかったのでばさっとシンプルにしました。Consumer <-> Pro, Desktop <-> Portableの軸で割って、4つのカテゴリーに区切ったのです。(YouTube Macworld NY 1999 09:30頃)

apple mac portfolio.png

なのに翌年にSteve Jobs氏は中途半端な製品を発表してしまいます。それがG4 Cubeです。

G4 cube in portfolio.png

PowerMacとiMacの良さを兼ね備えた製品というのが売りです。

Cube = Power Mac + iMac.png

でも売れなかったので、発表から1年半で販売中止になりました。

G4 Cube販売中止のプレスリリースがこれです。中間的なマーケットセグメントには熱狂的な顧客がいなかった訳ではないのですが、いかんせんマーケットサイズが小さすぎたという主旨です。

Apple® today announced that it will suspend production of the Power Mac™ G4 Cube indefinitely. The company said there is a small chance it will reintroduce an upgraded model of the unique computer in the future, but that there are no plans to do so at this time.

“Cube owners love their Cubes, but most customers decided to buy our powerful Power Mac G4 minitowers instead,” said Philip Schiller, Apple’s vice president of Worldwide Product Marketing.

The Power Mac G4 Cube, at less than one fourth the size of most PCs, represented an entirely new class of computer delivering high performance in an eight-inch cube suspended in a stunning crystal-clear enclosure.

G4 Cubeの教訓 : 新しい「中間」カテゴリーというのは危険信号

G4 Cubeの教訓は何か。それは非常に売上げが好調な2つの製品カテゴリーがあるからと言っても、その真ん中にも大きなマーケットニーズがあると思ってはいけないということだと思います。

むしろ好調な2つの製品カテゴリーに挟まれていると、顧客はどちらから一方に吸い寄せられてしまい、真ん中のセグメントはサイズが小さくなると思います。

そのとき、中途半端な製品のスペックを上げる改良を今更加える訳にもいきません。そこで結局は利益を犠牲にしてでも価格を下げ、下の方のカテゴリーの顧客に売り込むことになります。G4 Cubeもそうでした。

僕がいたバイオ業界の話になりますが、前社の新しいリアルタイムPCR装置がそうでした。ABIのフラグシップモデルを狙う訳でもなく(勝つのに必要なサポート体勢がありませんでした)、Takaraなどの安いモデルを狙う訳でもなく、真ん中のカテゴリーを目指すのが狙いだったのです。しかしふたを開けてみると中間のマーケットセグメントはわずかなサイズで、大部分の商談はTakaraとの競合になってしまい、価格をがんがん下げることになってしまいました。それはそれはもう社長まで値下げの号令を出す、本当にびっくりするような値下げの仕方でした。

新しいカテゴリーは端っこに作られる

Appleの話ばかりで恐縮ですが、Appleが新しく生み出した製品カテゴリーを思い出してみるといいと思います。成功したもので「中間」は一つもありません。

  1. Macintosh : 全く新しいユーザインタフェースを搭載した、画期的なパソコンでした。価格はべらぼうに高いものでした。
  2. iPod : ポケットの中に1,000曲。当時のMP3プレイヤーは小さなフラッシュメモリかCDにデータを焼き込んでいました。ハードディスクにデータを書き込むことによってトップスペックの1,000曲を実現し、しかもFirewireによって高速な書き込みも実現していました。
  3. iPhone : それまでのどのスマートフォンでも搭載していなかったタッチUIとJavascriptを含めたフルブラウザを兼ね備え、メールでもマーケットリーダーのBlackberryに引けを取りませんでした(Exchange互換だけは遅れましたが)。

Apple以外で言えば

  1. ネットブック : 圧倒的に安い価格でパソコンを提供。
  2. ウィンドウズパソコン : MacintoshのUIの素晴らしさを圧倒的に安い価格で提供。
  3. ソニーの薄型バイオノートブック : 当時としてはダントツの薄さでした。
  4. 電子辞書 : 紙の辞書よりは圧倒的に軽く、調べやすい。パソコンよりも軽いし、起動が速いし、安いし等々、圧倒的に便利。

成功する新しいカテゴリーは、基本的に既存カテゴリーの上位か下位のどちらかにしか生まれません。中間はうまくいかないのです。

Galaxy Tabはどうなる?

その流れが今回も当てはまるのならば、Galaxy Tabの運命は割とはっきりしています。

  1. まず売れません。どうして売れないかというと、持ち運びやすさを重視する人はGalaxy SもしくはiPhoneを買い、パソコンを代替するような使い方をする人はiPadを買うからです。あるいは片手で持てるeBook Readerが欲しい人は遥かに安価なKindleを買うでしょう。Galaxy Tabは中間的な製品としては秀逸です。しかし中間的な(中途半端な)マーケットセグメントのサイズは小さいのが一般的です。
  2. 仕方なくSamsungはGalaxy Tabの価格を下げます。今でも高すぎると言われているぐらいですから、失敗の原因を当然価格に求めるでしょう。あるいはキャリアとバンドリングして、なんとか見かけだけでも値下げします。そしてどれぐらい値下げが必要かというと、スマートフォンの購入を考えている人やKindleの購入を検討している人が立ち止まって考えるレベルまでの値下げ幅です。相当な値下げが必要です。
  3. Appleの場合はG4 Cubeを売らなければならない理由がなく、iMacとPowerMacで十分だったのですぐに撤退しました。Samsungが赤字すれすれでもGalaxy Tabを売り続けるか、それともGalaxy Sなどのスマートフォンに集中するかははっきり分かりません。多分逃げずにがんばって売り続けると思います。
  4. それでも最後は何らかの形で諦めるしかありません。それがどのような形になるかはちょっと予想がつきません。

まともにiPadに勝負に挑むのならば、中間を狙うのではなく、上か下かを狙うしかありません。

上を狙うというのは圧倒的な付加価値を付けるということです。カメラ程度では厳しいでしょう(近いうちに発表されるiPad 2にはついてくるでしょうし)。Flashでもだめです(というかそもそも実現不可能みたいだし)。

いまのところはキラーアプリとしてMicrosoft Officeが動くこととかしかないと思うのですが、Android用にMicrosoftがOfficeを移植する可能性はゼロに等しいでしょう。Android用のOpenOfficeみたいなやつはありますが、それが仮にMS Officeとの互換性が100%であったとしても、Microsoft公認のOfficeがあることに比べれば末端顧客へのインパクトは全然足りません。ですからMicrosoftがタブレット用のWindowsを開発するまでは、上から狙うのは無理そうです。GoogleもAndroid限定のキラーアプリを開発して上から狙えるようにするよりは、iPadでも使えるようなウェブアプリを作って、なるべく多くの人に使ってもらうのが全社戦略にマッチするはずです。

下を狙うのであれば価格を圧倒的に安くすることです。しかしMacintoshの時と異なり、Appleは積極的な価格設定と厳密な製造コストのコントロールをしています。まず圧倒的な差をつけるのは常識的には無理です。

10ヶ月前にも言いましたが(” iPadのこわさは、他のどの会社も真似できないものを作ったこと” )、iPadの独走はしばらく続きそうです。

Android TabletのFlashが使い物になるかどうか微妙な件

著名なテクノロジー評論家のWalt Mossberg (Wall Street Journal)とDavid Pogue (New York Times)のSamsung Galaxy Tabの評価が出そろいました。

Walt Mossbergが
Samsung’s Galaxy Tab Is iPad’s First Real Rival

David Pogueが
It’s a Tablet. It’s Gorgeous. It’s Costly.

どっちもFlashについては評価が低いです。

Walt Mossberg;

I found the Web browser to be a bit jerky in zooming into text and scrolling through long pages. I tested several Adobe Flash videos and websites written in Flash. Sometimes they played and sometimes they didn’t. In all cases, they slowed the browser down. On one site written in Flash, I got a warning saying I might want to “abort” lest the computer become “unresponsive.” In another case, the Tab crashed. So I conclude that while the Tab does play Flash, it needs work on that score.

David Pogue;

Because the Galaxy runs Android 2.2, it can also play Flash videos online (touché, iPad!). Or at least it’s supposed to. After some delay, I got Flash movie trailers and CNet videos to play, but at ESPN.com, the Play Video button just stared at me sullenly. (My Samsung rep says they play fine for him.)

Adobeとしては最後のチャンスだったと思うのですが、しくじってしまったようです。

そしてGoogleはFlashを搭載することによってiPad/iPhoneとの差別化を狙ったのでしょうが、却って悪い印象を与える可能性がありますね。サポートも大変です。